国沢光宏のホットコラム

2020 クルマ&バイク情報

Vol.199「未来の代替エネルギーについて」

菅義偉首相は所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする」と打ち出した。いわゆる「カーボンニュートラル」と言われる施策で、石油や天然ガスなど化石燃料を使い二酸化炭素を出した場合、それを吸収するなどして実質的な排出量をゼロにするというもの。「言うは易く行うは難し」で、実現に向けてのハードルは極めて高い。

自動車について考えてみよう。クルマの生産時に使うエネルギーについては他の産業と同じなので、個人だと解決できない国家としての問題になる。皆さんが気になるのは、自分のクルマがどんなパワーユニットになるかということだと思う。結論から書くと、温室効果ガスを出さない電気自動車か、水素を燃料として使う燃料電池車しかありません。

こう書くと「電気や水素を作るのにエネルギーを使う」みたいに思うかもしれません。実際、現時点では火力発電所で作った電力を使っている。ただ太陽光発電を使うことでカーボンニュートラルになります。自動車を年間1万km走らせようとすれば、現在の太陽光パネル技術でさえガレージ屋根の1.5倍程度のサイズがあればよい。

航続距離450kmを超える日産リーフe+

航続距離450kmを超える日産リーフe+

五菱自動車の「宏光」は45万円

五菱自動車の「宏光」は45万円

年内発売予定の新型MIRAI

年内発売予定の新型MIRAI

ただ30年もすれば今より圧倒的に安価で高い性能を持つ太陽光発電システムが作られるようになると思う。直近の10年ですらコストダウンと性能向上は進んだ。飛行機で日本上空から見ると、太陽光発電パネルの多さに驚くほど。また、太陽光発電は作った電力を貯めておくという機能があるという点で素晴らしい。

今後さらに太陽光発電が増えていくと、昼間などでは使い切れないくらいの電力が生じてしまう。それを有効に使うには水素として保存すればよい。太陽光発電に限らず、風力も水力も潮汐発電も火力発電と違い「必要な時に発電」ということができないため、電気を電池に貯めるか、水素として貯めるかの2択になる。効率を考えたら水素です。

電気自動車や燃料電池車はどうか?電気自動車の高性能化と低コスト化も、驚くほど進化した。今や満充電航続距離500kmは珍しくないし(日産リーフで実際に450km以上走ったことがある)、価格も最新の電気自動車だと車両価格+電気代の合計金額と、車両価格+ガソリン代の合計金額で並ぶようになってます。 電気自動車先進国の中国など、リチウムイオン電池を使った航続距離120kmという電気自動車が45万円で登場してきたほど。5年だと難しいだろうけれど、10年すると電気自動車は普通のクルマになっていることだろう。北欧諸国の如くどこの駐車スペースにも充電器が用意される。もしかするとどの産業よりも早く対応できるかもしれません。

燃料電池車も進化する。2020年末に発売予定となる新型トヨタMIRAIは航続距離にして30%以上長くなり、東京~大阪間を水素補給無しで走れるようになるという。価格もクラウンより車体サイズが大きい分くらいしか高くないようだ。新型MIRAIで文字通り「未来」に近づくと思う。これも30年後の2050年なら充分行けるだろう。自動車に関して言えば、温室効果ガス排出量ゼロを目指すことは可能だと考えます。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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