国沢光宏のホットコラム

2017 クルマ&バイク情報

Vol.163「ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違い」

マツダがディーゼルエンジンとガソリンエンジンの優れた特徴だけ使う『圧縮着火』という新しい低燃費エンジンを開発している。この情報に接し「ディーゼルエンジンとガソリンエンジンはどこが違うのか?」と思った人も少なくないだろう。以下、わかりやすく解説したい。

まずガソリンエンジン。簡単に言えば、圧縮した空気の中にガソリンを混ぜ、そこに火花を飛ばし、爆発の反動でピストンを押して回転エネルギーに変える(自転車でペダル漕ぐのと同じこと)。空気14.7に対しガソリン1の状況にすれば、爆発が安定。排気ガスはクリーンで出力も最大になる。

ディーゼルエンジンも空気を圧縮するところまで同じ。空気を圧縮すると温度が高くなる特性を持つ。わかりやすく書くと、気温10度の空気を10分の1に圧縮したら100度まで上がる。この特性を使い、シリンダー内の温度を300度以上にして軽油を噴射してやれば、一気に爆発するという寸法。

ちなみにガソリンは着火点が軽油より高温のため(軽油300度以上に対しガソリン400度以上)、ディーゼルエンジンにガソリンを入れても爆発しない。また、ガソリンエンジンに軽油を入れると、シリンダー内の温度が低過ぎてキチンと爆発しないため、やはり使いものにならず。

一方、熱効率では圧倒的にディーゼルエンジンが優れている。例えば走行するのに20馬力必要だとしよう。ディーゼルエンジンの場合、シリンダーで空気を吸い込み、圧縮して20馬力分軽油を噴射すればOK。50馬力必要なら、50馬力分。 空気の量は「吸えるだけ」。

マツダの圧縮着火エンジン「SKYACTIV-X」

SKYACTIV-Xのテスト車両

ガソリンエンジンの場合、空気の量とガソリンの量を14.7対1にしなければならない。空気をたくさん吸い込んだら、その分だけガソリンを混ぜないと爆発しないのだ。燃費を改善しようとしたら薄い燃料で燃やしたいところながら、ガソリンエンジンだと急に馬力落ちて使いモノにならない。

逆に考えれば「薄い燃料でガソリンをキレイに燃やせばディーゼルエンジンのように燃費が良くなる」ということ。その回答がマツダの『圧縮着火エンジン』なのだ。前述のようにガソリンも400度以上になれば軽油のように自然着火する。その状況を作り出してやれば良い。

今まで世界中の自動車メーカーがガソリンの圧縮着火エンジンを作ろうとしてきたものの、ガソリンを軽油のように安定させて爆発させることが出来なかった。参考までに書いておくと、ガソリンは軽油よりクリーンな燃料なので、圧縮着火させても排気ガスがキレイという美点を持つ。

残念ながら現在の技術では、ディーゼルエンジンの排気ガスを全領域(寒いときや高負荷時など)でクリーンにすることが難しい。ガソリンの圧縮着火エンジンの市販化に成功すれば、ディーゼルエンジンと同等の燃費でいながら、クリーンな排気ガスしか出さない素晴らしいパワーユニットになる。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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