Vol.142「国沢光宏が選ぶ2015-2016 日本カー・オブ・ザ・イヤー」
今年も日本カー・ブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)の時期になった。アメリカやヨーロッパといった自動車を生産している国の自動車産業にとって年に一度の区切りということもあり、日米欧それぞれ盛り上がる。自動車メーカーが無い国からすればうらやましいイベントのようだ。
日本COTYの選定方法は今期に発売されたクルマからまず10台を選ぶ。そしてその10台から12月7日の最終選考会でCOTYを決めるという流れ。以下、最終選考に残った10台を挙げておく。
- スズキ アルト
- スバル レガシィ
- トヨタ シエンタ
- 日産 エクストレイルハイブリッド
- ホンダ S660
- マツダ ロードスター
- BMW 2シリーズアクティブツアラー
- ジャガー XE
- フィアット 500X
- テスラ モデルS
車種を見れば解る通り、コスト重視の軽自動車から、2シーターのスポーツカー、はたまた大型電気自動車まで多岐に渡る。こうなると「売れるクルマ選び」でなければ「高性能車選び」でもない。「何年か経った時、2015年を象徴する1台を選びましょう」というのがコンセプト。よく「COTYを取ったクルマは売れない」とも言われるけれど、フィットやプリウスなど受賞してます。
リストを見て「どうして燃料電池車ミライが入っていないのか?」と思うかもしれません。COTYの対象車を選ぶレギュレーションの中に生産台数という項目もあり、残念ながら規定台数に届いておらず(注・テスラ モデルSは本国の生産台数が余裕で規定を超えている)。ハイブリッドや電気自動車など新しい技術はほとんどCOTYを取っているため、ミライの生産台数が多ければ最有力候補だったと考えます。
ホンダ S660
前出の10車種から本賞を選ぶのだけれど、今までのケースで言えば、生産台数が少なかったり、マイナーチェンジだったり、あまりに高額だったり、普通のクルマだったりすると点数が入りにくい。そんな条件を勘案すると、残るのはS660とロードスター。輸入車ではモデルSを除く3車種ということになる。ただ輸入車の場合、販売台数が多くないと得票伸びず。
過去を見てもCOTY受賞の輸入車は日本車並みの販売台数実績のあるVWゴルフの1回のみ。ちなみに輸入車の1位はインポートCOTYが贈られます。今年の輸入車を見ると、全く違うジャンルのため点数がバラ付くと思う。最終選考会までインポートCOTYは予想出来ない状態。
日本COTYは欧米から注目されているため、インポートCOTYも大きな価値がある。
マツダ ロードスター
ということでCOTYはS660とロードスターの一騎打ちになると思われる。この2車、軽自動車と普通車というサイズの違いこそあるものの、どちらも走りの楽しさを追求したオープン2シーターのスポーツカーだ。クルマとしての魅力は甲乙付けがたい。私も選考委員なのだけれど、投票日までどちらに満点を付けるか大いに悩みそうです。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。