国沢光宏のホットコラム

2015 クルマ&バイク情報

Vol.141「若者のクルマ人気が復活!?」

若い年代層のクルマ人気が上昇していると言われ始めた。様々な場面で新しい動きになっているようだ。いくつかの興味深い状況を紹介してみたいと思う。

若い世代の入場者数が増える傾向にあるオートサロン

まず運転免許。「今の若者はAT免許しか取らない」と思われていた。確かに2007年~2011年の5年間でMT免許の取得率が54%から46%まで8%も下がった*。しかし2011年以後の4年間は46%から44%と横ばい*。先日、学生さん達に話を聞いてみたら「マニュアル車の方が上級資格。あまり金額変わらないのなら、取っておきたいです」。

ここ2~3年、自動車関係のイベントにやってくる若い年代層が急増中である。年齢を調査していないため正確な統計になっていないけれど、前回の東京モーターショーや、モーターショーに匹敵する1日あたりの入場者数となる『オートサロン』は関係者の皆さん口を揃えて「若い人が多くて驚いた」。10月29日から開催されている今年の東京モーターショーの状況に注目したい。

手軽な費用で借りられるレンタカーも人気

レンタカー業界も手応えを感じているようだ。興味深いことに若い人に行きたい場所の調査をすると「高速道路のサービスエリア」や「コストコ」、「イケア」など、クルマを使うスポットが上位に上がる。クルマを持っていなければレンタカーを使うしかない。そんなことから若い年齢層のレンタカー利用者が増えているそうな。レンタカーでクルマの便利さを覚えれば欲しくなることだろう。

何より変化を敏感に感じているのが自動車の販売現場である。トヨタの国内販売担当によると「SUVやスポーツモデルに興味を示す若いお客さんが増えました。しかもネットなどで情報を集めているらしくクルマに詳しいです」。いわゆる「若者のクルマ離れ」と言われた時代は、クルマを道具として考えている人が多く商談もビジネスライクだったという。

なぜか?最大の要因は「若い人のクルマに対するイメージの変化」だと思う。現在30代あたりの世代は学校で「自動車が公害を出す。交通事故は身近に存在する危険」と教育された。この世代からすればクルマは生活の道具であり、必要に応じて使うもの。したがって趣味の対象になりにくい。もちろんクルマを使ったドライブという文化も無い。

一方、30歳以下は自動車に対し違う価値観を持つ。実際、教科書を調べてみたら、工場の公害も自動車の公害も「かつてそんなことがありました」という内容になっています。したがって30歳以下の人達は先輩世代がクルマに興味なかったため、クルマ文化を引き継いでいないけれど、少なくとも「クルマ嫌い」という傾向はなく、クルマを避ける世代とは明らかに違う。

ということで最近の若い年代層はMT免許も取るし、モーターショーに行く人も増えた。ドライブも大好き。そしてクルマが欲しいと思っている。世界的に見れば標準的なクルマ観を持っていると考えていいだろう。自動車は日本の基幹産業だし、経済効果も大きい。クルマという“血液”の巡りがよくなれば景気だって良くなるだろう。

長い間「曇り時々雨」のようだったクルマ業界に晴れ間が見えてきたように思います。

※参考資料
http://1license.com/mt-at-menkyo-syutoku-waria/hutuu-menkyo-mt-at-hiritu/

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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