国沢光宏のホットコラム

2014 クルマ&バイク情報

Vol.126「燃料電池車の最新情報」

トヨタFCV

トヨタが今年度中に『FCV』を700万円程度で発売する、と発表してから、急速に燃料電池車について聞かれるようになってきた。最新情報をお届けしたい。最初に現在の状況を解りやすく説明すると「普及するかどうかの決め手となるボールは政府側にあります」ということになるんだと思う。

今まで燃料電池車の実現へ向けての「ボール」は自動車メーカー側にあった。開発初期の段階だと性能(黎明期は燃料電池の効率が悪く巨大でした)。次の段階で寿命&耐久性。数年前に技術的なハードルを超えるメドが付いた後は、高額なコストをどう下げて行くかという最後の難関に取り組んでました。

これらのハードル、先日のトヨタの発表により全て解決されていると判明。700万円という目標価格は世界中の自動車メーカーを震撼させた。中でも腰を抜かしたのが、トヨタと同じく2015年に燃料電池車を発売するホンダ。ホンダも700万円を大きく超えることなど出来なくなりましたから。

ホンダFCXクラリティ

いずれにしろトヨタFCVの価格は、補助金も出ることを考えればベンツやレクサスやBMWと同等。電気自動車用の急速充電スタンドと同じように当面水素の価格を無料にするということも論議されており、そうなれば※8万km走るだけで200万円以上の燃料コストを浮かせられます。

現在ボールを持っている政府側の課題はなんだろう?水素供給インフラの構築だ。一般的な作り方である「水に電気を通す電気分解」や「天然ガスを熱して作る」方法だと、効率もコストも悪い。水素を作るだけでなく、水素タンクに積む700気圧の水素を圧縮するエネルギーも膨大。

「水素を作る」分と「700気圧にする」エネルギーで電気自動車を走らせれば、1カ所5億円と言われる水素ステーションや、高額な燃料電池車など作る必要無し。エネルギー効率もコストも電気自動車に届かない。「いかに低コスト&低エネルギーで700気圧の水素を作るか」が現時点の課題です。

700気圧の水素タンク

インフラ側にあるボールを蹴り出すにはどうしたらいいか?水素そのものの供給について言えば、石油精製や、製鉄時に大量発生する水素を上手に活用すればいいかもしれない。現在、余って単に燃やしている水素だけで100万台規模の燃料電池車を走らせるだけの量があるとも言われているほど。

700気圧に圧縮するにはアイデアが必要だ。急に圧縮すると熱も出るため冷やさなければならないが、逆の発想でその熱を有効に利用するというアプローチだってあるだろう。政府の動きを見ると、当面は水素インフラの構築に予算を付けて対応する方向。今後、安くて低エネルギーで水素インフラを作れたら素晴らしい。

そうそう。燃料電池の乗り味が気になるかもしれない。トヨタやホンダの試作車に何度も試乗した経験からすれば、全く不満無し!以上走れるとのこと。それでいて排出するのは水だけ。燃料電池車が普通の存在になる日も遠くない?
※燃費7km/L 、180円(ハイオク)で8万km走行した場合の燃料代

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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