Vol.119「2013-2014 日本カー・オブ・ザ・イヤー ~初の輸入車受賞~」
電気自動車も追加されるVWゴルフ
2013-2014年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)はVWゴルフが獲得した。34回目となる日本COTYながら、輸入車にとって初の栄誉。ちなみに世界3大COTYであるアメリカCOTYとヨーロッパCOTYの歴史を見ると、日本車の受賞も少なからずあります。
なぜ日本COTYは輸入車にとってハードルが高いのか?割と簡単です。アメリカでもヨーロッパでも、日本車は同じクラスのライバルと同じような価格で売られている。アメリカでのアコードの価格と、同じクラスのGM車やフォード車の価格は同等なのだった。ヨーロッパも同じ。
今までの日本市場を見ると、輸入車は突出して高価だった。高いメーカーだと同じクラスの日本車の2倍。安いメーカーでも1.5倍といったイメージ。したがってCOTYの選考委員も日本車と輸入車を同じ土俵で評価しにくかったのだ。海外のCOTYだって日本車が高ければ受賞できなかっただろう。
なぜゴルフがCOTYを取れたのだろう? いくつか理由を挙げられる。まず日本車との価格差の現象。同じクラスに属す人気の日本車と言えばプリウスだ。売れ筋グレードの『S』を選ぶと232万円。一方、ゴルフは249万円。17万円の価格差があるものの、ゴルフは追突被害低減ブレーキまで付く。
このブレーキオプションなら5万円程度するため実質的に12万円差。さらに金額評価が難しいけれど、シートやブレーキ、足回りに使われている部品などのクオリティはゴルフ優勢。乗れば誰でも「ゴルフいいね!」と思うことだろう。国産車と同等の価格の輸入車が出てきたワケです。
航続距離300KmのBMW i3
燃費だって負けていない。ゴルフは超低燃費の1.2リッターターボエンジンと、極めて伝達効率の良いツインクラッチ式AT、そして効率の良いアイドリングストップを組み合わせることにより、JC08燃費で21km/Lを達成。御存知の通り輸入車のJC08燃費、実際の数値に近い。
実燃費を計測してみると、20km/Lに近い数字も普通に出る、といったベーシックなスペックに加え、何より乗って楽しい。COTYの選考理由に「いま日本のユーザーに一番乗って欲しいクルマ」とあるほど。
また、多くの選考委員が日本車の元気の無さを訴えている。何とか世界をリードしているのはハイブリッド技術くらいのもので(ここにきて猛追を受けている)、レーダーなど使う衝突安全防止システムなど、完全に出遅れてしまった。収益こそ順調な日本の自動車産業ながら、技術的には推され気味。
2014年はどうか?BMWから小型発電機を搭載出来る画期的な電気自動車『i3』や、世界最高性能の衝突防止システムを持つベンツ『Cクラス』などが日本に入ってくる。日本勢と言えば、どうやら画期的な技術無し。もしかすると2014-2015年のCOTYも輸入車になるかも?
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。