国沢光宏のホットコラム

2013 モーターショー

Vol.111「2013ソウルモーターショー視察結果」

昇り龍の勢いだった現代自動車や起亜自動車など韓国勢が失速しているというニュースに接するようになってきた。最大の市場であるアメリカで伸び悩み、韓国の工場の稼働率も低迷し始めるなど、数字にハッキリ現れ始めている。果たして韓国はどうなっているのだろうか?お膝元のソウルで行われたモーターショーを取材してみると‥‥。

2013ソウルモーターショー

ソウルモーターショーは東京と同じく隔年の開催。前回も前々回も韓国勢の出展内容や技術が充実しており「日本は完全に追いつかれる!」という意を強く持たされることになった。ハイブリッドや電気自動車だけでなく、日本が出遅れている伝達効率の良いツインクラッチATや、世界の流行である小排気量ターボエンジンなど全て揃っていたのだ。

実際、2年くらい前から韓国勢は突如台頭し始め、世界中で売れ始める。今回も日本車の脅威になると思われる技術や新型車が盛りだくさんと思われた。しかし取材を始めるや「どうしたのだろう?」。新しい技術を探すのだけれど、全く出ていない。発売済みの車種や技術ばかり。率直に言って「元気がない」という印象。

詳しく取材してみたら、韓国の状況が見えてきた。まとめると「今までは海外の技術を追いかけていればよかった。でも先頭に立ってしまうと参考にする技術がない。かといって独自で新しい技術やコンセプトを考えるような“基礎研究”をしてこなかった」。先頭集団に出てみたら、どこに行くべきなのか解らなくなったのだろう。

韓国に上陸した日本車

なるほど、日本は前述のツインクラッチATや小排気量ターボで欧米のメーカーより出遅れた。けれど新しいタイプのハイブリッドや、ディーゼルエンジンに匹敵する熱効率を持つガソリンエンジンなど、違う技術を育ててきている。基礎研究や技術の蓄積と言う点でも韓国より優位にあり、復調の兆しを感じさせる状況。

加えてアベノミクスによる円安も、世界中の市場で強い追い風になっている。1ドル=100円程度の為替レートなら、日本車だって十分な価格競争力を持つ。というか、今までの円高はどう考えても行き過ぎだった。韓国車と日本車が同じ価格なら、どこの国でも日本車の完成度や信頼性を評価するユーザーが少なくない。

もう一つ。韓国はアメリカとEUとの間でFTA(自由貿易協定)を結んでいる。結果、アメリカやEUからの輸入車が大量に入ってくることに。韓国にとって誤算だったのはアメリカの工場で生産された日本車(日本からの輸出は出来なかった)まで入ってきたことだろう。カムリやアコードの売れ行きは急上昇中だ。

日本にとって韓国は良いライバルだと思う。ライバルの存在あればこそ頑張る気になれます。実際、このまま日本が逃げ切れるとは考えにくい。ただ踊り場に差し掛かっていることだけは間違いない。この間に全開でダッシュを決めておかねばならないだろう。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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