Vol.110「次世代の燃料の本命はどれだ?」
アメリカで大量に採れ始めたシェールガスや、日本近海の海底に埋蔵されているメタンハイドレートがテスト採掘されるなど、ここにきて次世代燃料の話題で盛り上がっている。果たして自動車用燃料の本命は何になるのだろうか?以下、考えられる次世代燃料を分析してみたい。
天然ガスは米のシェールガス来ると有望
●天然ガス
アメリカで採れるシェールガスは天然ガスである。これを圧縮して使えばいい。ガソリンエンジンの半分くらいと言われる燃料コストが魅力的だ。ただトランクスペースの半分くらいを占領する高圧タンク(大きいだけでなく高価)が必要になり、航続距離も短い。今まで何度か天然ガス自動車は提案されてきたけれど、実用化にならず。
●GTL
天然ガスを加工し常温/常圧で液体にしたもの。ディーゼルエンジンの燃料として使えます。天然ガスから作った軽油と考えればいい。硫黄分に代表される不純物を一切含まないため排気ガスはクリーン。すでに昭和シェル石油が室内暖房用に試験販売をしている。現時点では軽油よりコスト的に高い。大量生産し、安価になってくればイッキに普及する可能性大。
●バイオエタノール
トウモロコシやサトウキビから作るアルコール。生産コストは下がってきたものの、天候不順などで農作物の収穫量が減ると、家畜用の飼料も高くなってしまう。人間の食糧に影響を与えるということから最近は人気低迷。今以上に生産量が増えることなど無いと思う。プランクトンや藻類からアルコールが採れるようになれば超有望。
ショッピングモールにある急速充電器
●太陽光
日本で自給自足出来る数少ないエネルギー。ガレージの屋根分の太陽光パネルがあれば、電気自動車を年間1万kmくらい走らせられる(ガソリン12万円分くらいの電力を作れる)。電気自動車の価格も数年で急激に下がりそうなので、一戸建て住宅に住んでいる人は太陽光発電による電気自動車が最も環境と財布にやさしいかもしれません。
●メタンハイドレート
日本近海に天然ガス100年分に相当するという埋蔵量がある。ただ1000m以上の海底に薄く堆積しているため、効率よく取り出そうとすれば全く新しい技術を確立しない限り実用化は難しい。太陽光や天然ガス由来のGTLに代表される普及直前の次世代エネルギーと比べ条件的に厳しい。
●燃料電池
2015年から発売する、とアナウンスしているメーカーも出てきたが、依然として燃料である水素を安価に搭載する技術は確立されていない。水素を作るのに電気が必要というのも大きな課題の一つ。乗用車用としての普及は時間が掛かると思う。燃料電池より早いタイミングで500km以上の航続距離を持つ電池が開発されるだろう。
●ガソリン&軽油
天然ガスや太陽光など次世代エネルギーのコストが大幅に低下してきたため、ガソリンの消費量は減っていく。何のかんの言っても石油の埋蔵量は多いので、高騰すれば消費量が減ってダブついてくると言われている。燃費の良いハイブリッドやディーゼルエンジンなら、1リッター200円になってもニーズはあるだろう。
ということで本命は燃費の良いハイブリッド車かディーゼル車。そして電気自動車も徐々に普及していくことだろう。GTLが安くなれば、3番目のエネルギーになると思います。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。