Vol.107「2012-2013 日本カー・オブ・ザ・イヤー ~マツダCX-5の実力~」
日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞式
2012~2013年の日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下COTYと略)は、自動車メディアを大いに賑わせたトヨタ86やスバルBRZを見事うっちゃり、マツダCX-5が受賞した。マツダ自身も「全く予想していませんでした」。どうしてCX-5になったのだろう?
かくいう私もCOTYの選考委員でCX-5に満点の10点を投じている。理由はディーゼルエンジンを日本で復権させたからに他ならない。御存知の通りディーゼルエンジンは10年前まで汚い排気ガスを出していた。燃料である軽油も硫黄に代表される不純物を大量に含んでいた。
人体に有害な燃え残りを出す燃料を燃やし、浄化もせず大気中に排出していたのである。当然の如く健康被害を引き起こしてしまう。その後、厳しい排出ガス規制が始まるのだけれど、ディーゼル用の触媒の開発は難しい。しかも触媒の素材として大量の白金を使うなど、コスト的にもハードルが高かった。
CX-5の燃費。リッター17.4kmくらいは普通に出ます
かくして乗用車のディーゼルエンジンは絶滅。その後、2008年に日産がエクストレイルのディーゼル車を発売したものの、化学プラントに匹敵する高度な排気ガス浄化装備(酸化触媒+PMと呼ばれるスス用のフィルター+NOx触媒)のコストが高く、ガソリン車より60万円以上高くなってしまう。
とはいえディーゼルの低燃費性能は素晴らしい!エクストレイルの燃費もハイブリッド車を凌いでいた。更に燃料の軽油もガソリンより20円前後安い。車両価格さえ手頃なら二酸化炭素の排出量が少ないECOカーなのだ。特に車体重量のあるSUVなど、ハイブリッドより相性が良い。
というあたりに着目したマツダは、高価なNOx触媒を使わないで最新の厳しい排出ガス規制をクリア出来るディーゼルの開発に成功する。CX-5のガソリンとディーゼルの価格を見ると38万円差。しかもクリーンディーゼル補助金も18万円出るため、実質的に20万円差。この程度なら燃料コストの安さでペイしてしまう。
自動車選びに新しい選択肢が増えたということである。最後までCOTYを競ったトヨタ86やスバルBRZも素晴らしい魅力を持ったクルマながら、21世紀の自動車ライフで一番重要なエネルギー問題の新しい提案となるクリーンディーゼル搭載のCX-5には及ばなかった、ということだと思う。
参考までに書いておくと、クリーンディーゼルの排出ガス規制の条件はガソリンエンジンと全く同じ。どんなにアクセルを踏んでも黒い煙どころか、ディーゼル特有の臭いさえしない(エンジン始動直後の短い時間だけ少し臭いを感じる)。排気管の写真を撮ると、ススが全く付いていない。
ちなみにクリーンディーゼル用のオイル添加剤は専用の規格をクリアしていなければ、排気ガスを汚してしまう。KUREの『オイルシステム ディーゼル車用』ならOK。クリーンな排気ガスのままオイル油膜を強化し、エンジンのコンディションをキープしてくれます。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。