Vol.104「国沢光宏の「今、気になるクルマはこれ!」」
「新しさ」や「楽しさ」のヒントを見つけ出せずにいる日本車を横目に、ドイツ勢が元気だ。なかでも今年デビューしてきた『BMW3シリーズ』と『VW up!』は、クルマ好きの“ツボ”を大いに刺激してくれる。以下、どんな新しさや楽しさを持っているのだろうか?
同じ2リッターターボを搭載するBMW3シリーズとレガシィ
まず3シリーズから。このクルマの特徴はエンジンラインアップにある。ベーシックグレードに搭載される2リッター4気筒のターボエンジンのスペックを見ると、従来型なら2.5リッターエンジンに相当する馬力とトルクを持つ。いや、実際ハンドルを握ってもトルクの太さに驚く。
素晴らしいのが燃費。2.5リッターターボ無しエンジンと同等の出力を出す320iは、BMWからすれば得意と言えない(ドイツ式の燃費計測モードと違う)日本のJC08モードで16.6km/Lという素晴らしい数値をカタログに載せる。輸入車のカタログ燃費は日本車より実燃費に近い。
ハイパワーエンジンを搭載した『328i』でも15.2km/Lと優秀。ちなみに同等の車重の日本車であるレガシィのJC08は2リッターターボエンジン車で12.4km/Lだ。燃費が良いと思われている日本車より20%も効率の高いエンジンを搭載している、ということ。
先日追加されたディーゼルエンジンにも驚く。同じ2リッターターボながら、最大トルクは4リッターターボ無しエンジンに匹敵する38.7kgmもある!それでいてJC08燃費が19.4km/L。ガソリン車と20万円しか変わらない価格なのだから凄い(しかも9万円の補助金も出る)。
VWのup!
VW up!は149万円からという思い切った価格を付けてきた。横滑り防止装置やサイドエアバッグだけでなく、30km/h以下での追突事故を防ぐ効果を持つ『シティ・エマージェンシーブレーキ』まで標準装備されている。ちなみにコンパクトカーでこういった安全装備を持つ日本車は無い。
up!も燃費が大きなアピールポイントになっている。JC08の23.1km/Lこそ1リッターエンジン搭載のコンパクトカーとしては普通の数字ながら、実際の燃費も限りなく近い。横浜近辺で試乗した所、燃費を気にすることなく走って20km/L以下にならなかった。
加えて安価な割にはドイツ車らしい質感の高い乗り心地を持つ。日本車と全く違います。セカンドカーとして使うなら149万円のベースグレード(3ドアHB)で何の問題もない。168万円の5ドアHBボディを選んでファーストカーとして使うことだって可能。
ディーラーもやる気満々。国産車からの乗り換えを狙っており、気軽に試乗させてくれます。最近「魅力的なクルマが無い」と思っているなら、ぜひとも円高ユーロ安でお手頃価格になった輸入車の味見などいかがだろうか。輸入車が話題になれば日本勢も刺激を受け、魅力的なクルマを出してくれると思います。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。