国沢光宏のホットコラム

2011 メンテナンス情報

Vol.86「豪雪地帯の塩カル対策」

冬季に濡れた路面の高速道路を走ると、クルマは「白い結晶物」で汚れてしまう。まるで魚の塩焼きといった感じ。この結晶物、簡単に言えば「塩」。凍結防止のため大量に撒かれているのだ。もちろんクルマにとって手強い存在。今回は凍結防止剤について考察してみたいと思う。

まず効能から。説明するまでもなく凍った路面は危険。「可能なら溶かしたい」ということで「塩」を撒くワケ。ここで皆さん「塩を加えたら凍るのでは?」と思うかもしれない。確かに小学校の実験でシャーベットを作る際、ビーカーの中の氷に塩を加える。すると見る見る氷の温度は下がっていく。

そしてビーカーに入れた試験管の中の物質が凍ってシャーベットになる、という寸法。ここで重要なのは、ビーカーの中の氷である。溶けた状態のままです。つまり氷に「塩」を混ぜると、凍結する温度を下げるという効果を出す。すなわち凍った路面に「塩」を撒けば溶けるのだった。

カッコ付きの「塩」としたのは、食用になる塩化ナトリウムに限らないため。というのも塩化ナリトウムを大量に撒くと生態系に影響与えてしまうし、効能だって低い。塩化ナトリウムの凍結温度は飽和状態でマイナス21度。一方、塩化カルシウムだとマイナス51度まで凍らない。

塩化ナトリウムより効率が良いため使用量を減らせる、ということで高速道路で使われる凍結防止剤は、たいてい塩化カルシウムである(塩カルと呼ばれる)。これらの凍結防止剤、困ったことに強烈な錆を発生させてしまう。海水につけているのと全く同じ、と考えていいほど。

この点、自動車メーカーも十分承知で、ボディ下面に厳重な防錆処理を施してある。しかし防錆処理が難しかったり、そもそも防錆処理を出来なかったりする場所も少なくない。例えばブレーキディスク。常時表面を削られるため、凍結防止剤を付着したままの状態で1ヶ月放置したらボロボロ。

そこまで酷くないにしても、サスペンションのアーム類や、ボディ下面などハネ石などでスリ傷がついてしまっていることも少なくない。こういった場所に凍結防止剤でも入り込もうものなら大変。最悪、サスペンションのアーム折損ということだってある。というか、実際に多いです。

一番良い対応策は「凍結防止剤をすぐ落とす」ということ。雪道を走ったら、即座に下回りを高圧洗車して欲しい。逆にボディ面の塗装はタフなので気にする必要なし。特に排気系についた凍結防止剤を徹底的に落としておくことをすすめておく(薄板のマフラー部分など最短4年で穴あきます)。

洗車終了後、コーティングによる強い防錆効果を持つ『シャシーコートブラック』か『シャシーコートクリア』を吹いておけば一段と効果的。雪道を走った後のメンテは1時間でも早い方が良いため、面倒でも出来ればその日にやって欲しい。帰り道にスチーム洗車屋さんに寄るのがベストです。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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