Vol.82「パリモーターショー2010 ~今後のエコカーは?~」
今年は東京モーターショー/フランクフルトショーのない年なので、パリサロンが最大規模のモーターショーになります。果たして注目すべき技術や 新型車なども多数登場しただろうか?結論から書いてしまうとどうやら「階段の踊り場」になってしまっているようですね。分析しよう。
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トヨタの5リッターハイブリッドを搭載するロータス・エリート
まずモーターショーの華であるスポーツカー。ガソリンエンジンに負けない性能を持つハイブリッド車を、老舗スポーツカーメーカーが多数出展していた。ロータスはトヨタのシステムを採用した5リッターV8エンジンのハイブリッド車を発表。ジャガーやアウディなどもハイブリッド車に注力してます。
高級レストランのように「付加価値を付けたクルマで効率的な利幅を上げる」というビジネススタイルを続けてきたヨーロッパの高級車メーカーの場合、環境を重視したコンパクトカーを造っても十分な利益を上げることが出来ないため、どうしても高性能路線を突っ走らなければならない。
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日本では来春発売予定のレクサスCT200h
冷静に考えれば2千万円のクルマを買えるならガソリンが1リッターあたり300円になっても気にならないのでは? と思う。そういった点からすればお金持ちの文化の“徒花(あだばな)”と言えるかもしれません。普通の人にとって「高性能スポーツカー」=「憧れの存在」でなくなりつつあるようだ。
会場を訪れる普通のフランス人も同じ印象を持つらしく、むしろ来年から始まる新しいカテゴリーのWRC競技車両の方が人気を集めていた。実際、来シーズンからのWRCは、フィットやヴィッツ級のクルマをベースとしている。やはり誰でも気軽に買えるクルマに興味を持つのだろう。
新しい技術に期待したけれど残念ながらなし。昨年のフランクフルトで多数のECOカーを出展させてきたVWグループすら、パリサロンはこれといった技術展示をしていない。ルノーやシトロエン、プジョーといった地元フランス勢からも大きなニュースになるような技術なし。
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来シーズンからデビューするミニのラリー車
強いて言えば『ツインエア』と呼ばれるフィアットの燃費追求型900cc2気筒エンジンのみ注目されていた。ちなみに軽量かつコンパクトな2気筒エンジンは日本の自動車メーカーも次世代ECOカー用として開発中。会場に展示されていた2気筒エンジンを入念にチェックしている人も多かったという。
気になる日本勢はどうか? 積極的だったのがトヨタ。次期型ラクティスの最終試作モデルを発表したり、プリウスの基本システムを使う『レクサスCT200h』の実車を展示したりと元気。ホンダは日本に先駆けてフィット・ハイブリッドを出展したものの、あまり注目されなかったようだ。
日本の自動車メーカーに聞くと「最近ヨーロッパ市場は苦戦しています」。F1やWRCといったモータースポーツから撤退したためイメージ的に薄くなり、さらに折からの円高によって車両価格も安く出来ず。ここ数年は堪え忍ぶしかないのだという。「攻め!」に転じるのは2012年か?
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国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。