Vol.79「ラリー参戦記2010」
モータースポーツも「費用対効果」という考え方が重要になってきた。「湯水の如くお金を使える状況にない」と言い換えてもよい。最小限の出費で最大限の結果を出したい、ということです。今シーズンはそんなコンセプトで『タイラリー選手権』を狙うことにした。ナショナルチャンピオンを獲得できれば名誉として文句ない。
まず車両。私が今シーズン乗るグループN仕様(ラリーのF1に相当するWRカーを除けば最上級のクラス)のインプレッサは、2年前に中古で購入。輸入小型車と同等の450万円(戦闘能力のあるラリーカーを作ると車両価格+1000万円以上する)。現時点で5万km以上走行しているが、エンジンもミッションもオーバーホールを行っていない。
参戦に必要な予算だけれど、物価の安いタイなら、1シーズン4戦出場して参戦費用は350万円程度で何とかなりそう。とはいえ「標準的なモータースポーツのお金のかけ方」をしたら、やはり「湯水のように」になってしまうだろう。部品一つとってもモータースポーツは「壊れる前に交換」が原則。壊れてからじゃ遅いですから。
そこで発想を変え「ノーマル車の実力を引き出す」ことにした次第。例えば今シーズンが始まる前、エンジンのオーバーホールを強く推奨された。お願いしようかと思ったものの、これは良い機会だと思い、『モーターレブ多走行車用』の使用を考えた。私が推薦しているKUREオイルシステム『モーターレブ』に、昨年から5万km以上走った多走行車向けのモーターレブも新登場。だったらこの『モーターレブ多走行車用』を使ってみようかと。
オイルクーラーに泥が付くため オイル温度は上昇する
しかしラリー関係者に相談してみると、あまり良い顔をしない。「極めて気温の高い地域のラリーなのでエンジンやオイルの負担が大きいです。走行距離の多いエンジンをオーバーホールすべきだし、オイルも大事です」。実は2008年の『WRCジャパン』でもラリー関係者の意見具申を聞かず『モーターレブ』を使用。全く問題なかった。
オイルクーラーに泥が付くため オイル温度は上昇する
そこでオーバーホールを行わず、オイルもスバル純正品+『モーターレブ多走行車用』を選択することにした次第。もし無事シーズンを走り切れたら、素晴らしい実証になる。灼熱の地のラリーより厳しい使用状況なんて考えられませんから。
ということで迎えた開幕戦は、暑いと言われるタイで最も暑い時期。地上1mの気温が軽く40度を超える。しかも! 開幕前の情報では昨年のチャンピオンも出ないというので、楽なラリーになると予想していたが、エントリーリストを見たら、元イタリアのチャンピオンであるステファノ・マリーニ選手の名前が。
そんな状況で迎えた開幕戦で、何と優勝してしまったのだ。続く第2戦はマリーニ選手に加え、昨年までのタイのチャンピオンもエントリー。これまた厳しいラリー展開になったものの、やはり1位でゴールしてしまった。エンジンは見事に絶好調である。
2戦を終わってエンジンは好調である
2戦終わった時点でのポイントは国沢20点。マリーニ選手とウィッタヤ選手が8点ずつ。残る2戦で9点以上取れれば(3位2回でいい)シリーズチャンピオンという極めて有利な展開になってきた。果たして5万km以上走っているエンジン、耐えてくれるだろうか?
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。