Vol.72「国沢光宏が選ぶ歴代バイクベスト5」
4輪車を「道具」としての色が濃い文明の利器だとすれば、2輪車は「文化」である。必要以上の性能を持つ2輪車は本来「不要な道具」と言っても良いのかもしれないが、「文化」だからこそ面白いし熱烈なファンも多いのだろう。当然ながら個人の趣味で大きくベスト5は変わってくると思う。「好み」を考慮し始めると収拾が付かないため「日本のバイク史」を考えた順位を付けてみた。
5位 スズキGT380
スズキが初めて作った近代のバイクは「ウォーターバッファロー」と呼ばれるGT750である。ライバルだったホンダの4ストローク4気筒エンジンより圧倒的に振動が少ない水冷の2ストローク3気筒エンジンを搭載。あまり知られていないことながら、絶対的な加速性能でもCB750を凌いでいた。GT380はその流れを汲む。デビュー当初あまり売れなかったのだけれど、やがて2輪の免許制度が変わり、中型免許で乗れるバイクで最も大きな車体を持つ(3気筒なのに4本マフラーです)GT380は大人気車種に。
4位 ヤマハRZ250
40歳以上のバイク大好き世代にとって、ヤマハのイメージと言えば2ストロークのスポーツバイクだろう。年齢によってTZR250という人もいるだろうし、50歳代であればRZ250やRD250、はたまたRX250まで遡るかもしれない。コンセプトは一環して「250cc最強の動力性能」である。私も初めてRD250に乗った時の衝撃を今だに覚えてます。クラッチミートしたと思ったら、空を向いていました。同じ車体に350ccエンジンを搭載するモデルは、どの世代であってもサーキットを走らせたら市販バイク最速だった。
3位 カワサキ750RS
大排気量車を得意としていたカワサキは、1968年の東京モーターショーに出展されたホンダCB750を見て大きな衝撃を受ける。遅れること4年。海外で900ccのZ1を発売し、翌年日本の法規に合わせ750ccとした750RS(Z2)をリリース。魅力はスタイルだろう。流麗なタンクや、迫力のあるエンジン、砲弾型のミラーなどなど、全てが当時のバイク好きの魂を射抜いた。世界的なカワサキ人気はZシリーズから始まったと言って間違いない。
2位 ホンダCB750
やがて世界を席巻することになった日本製のスポーツバイクの原点といっていい。1969年に発売されるや、あっという間にアグスタやBSA、トライアンフ、ノートンといったヨーロッパの名車達を押しのけ大きなシェアを獲得する。後継モデルのFシリーズも耐久レースで大活躍。当時のバイク好きにとって憧れの存在となった。初代のKシリーズは『750ライダー』、Fシリーズは『バリバリ伝説』いずれもマンガの主人公のバイク。
1位 ホンダ・スーパーカブ
1位は皆さん自分の好きなバイクをイメージして頂ければいいかと。私の場合、6気筒エンジンを搭載するCBX1000(現在乗っています)。しかし数ある名車から1台を選べと言われれば、やっぱりスーパーカブである。私自身、初めて乗ったバイクがカブだった(最初に買ったのはヤマハ・メイト)。おそらく世界で最も有名かつ、愛されているバイクだと思う。2009年の東京モーターショーには次世代のスーパーカブである『EV-Cub』を出展。次世代のバイクもカブから始まる?
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。