Vol.71「次世代自動車、電気自動車の基礎知識」
世界初の本格的な量販EV(電気自動車)である三菱i-MiEVが発売されるなど、自動車は新しい時代に入ったと言ってよかろう。TVや新聞といったメディアでも盛んにEVを取り上げている。しかし「電気代」や「外出先で電気が無くなったらどうする?」に代表される「一般知識」となると案外知られていない。以下、紹介しよう。
Q. 充電するのにいくらかかるか?
A. プリウスに代表されるハイブリッド車の場合、ガソリン1Lで約20km走る。EVで20km走るには、おおよそ3kWh程度の電力を必要とする。一般の家庭で契約している電力料金であれば72円39銭。1リッター当たり53円80銭の税金を抜いたガソリン価格より少し高い。ただ深夜電力を使うとグッと安くなり24円66銭。ちなみに三菱i-MiEVで80kmほど走ると12kWhの電力が必要。昼間電力なら約290円。深夜電力でおよそ100円です。
Q. 家で充電できるの?
A. 100V電源で充電可能。ただし15A(1500W)を必要とする。契約アンペア30Aの場合、充電開始と共にブレーカーが飛ぶ可能性大。また、コンセントにアース線も必要。といったことから、EVを購入したら200Vのコンセントを付けてもらうことをすすめておく。基本的にどこの家にも200Vが来ており、簡単な工事で済む。
Q. 充電時間は?
A. 三菱i-MiEVのバッテリーが空っぽの状態であれば、フルに充電すると100Vで約14時間。200Vなら約7時間。通常の街乗り程度の場合、半分くらいまでしか使わないため、毎日の充電はそれぞれ半分くらいをイメージしておけばいいだろう。また、一部のディーラーやスタンドに設置してある急速充電器を使うと、容量80%まで最高30分(急速だと満充電は出来ない)。
Q. 外出先での電気切れは?
A. 完全に電気が無くなったら動かなくなってしまう。EV用のバッテリーは巨大なので、予備を持ち歩くことなど不可能。幸い100Vのコンセントならどこにでもある。最悪、自動車ディーラーなど適当な充電場所を探すしかない。ただ、ガソリン車同様、突然動かなくなることもないので、電力が少なくなってからでも、充電できる場所へたどり着くことは充分に可能だと思う。ちなみに急速充電器の利用は現在無料。
Q. 音はまったくなし? 危ない?
A. 極めて静音性の高いモーターを使うため、極低速走行だと限りなく無音に近い。したがって歩道と車道の区分の無い道路では何らかの音を出すべきだという声も多いようだ(特に目の不自由な方から強くリクエストされている)。現在国交省では音を出すという方針で検討中。
Q. ハイブリッド車と比べてどうか?
A. 最大の違いが航続距離。ハイブリッド車(20kmほど電気だけで走行出来るプラグインハイブリッド車も含む)はガソリン満タンで500km以上の航続距離を持つ上、ガソリンスタンドも全国に普及しているため、ガソリンを給油し続ければ、どこまででも走れる。一方、EVの満充電での航続距離は最大で150km程度。急速充電器の普及もまだ全国的にされていないため、長距離走行に関しては、現段階ではハイブリッド車の方が有利。
Q. 普及への課題
A. やはり価格だろう。現在バッテリーの価格は三菱i-MiEVで240万円くらいだと言われている。バッテリーの価格が現在の4分の1くらいになれば、ガソリン代と電気代の差額で十分ペイするようになります。早ければ2013年くらいか?
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。