Vol.54「冷却系統のメンテナンス」
海外では「自分のクルマのメンテナンスをする」ことが普通。しかし優れた信頼性を持つ日本車に乗っていると、クルマ好きですら愛車のボンネットを開ける機会など少なくなってしまう。
定期的なチェックさえ行っていればトラブル防止のため有用なだけでなく、良好なコンディションをキープ出来ます。
次の休日にでも夏に負担が掛かる冷却系統の点検をしてみたらいかがだろうか?といっても冷却系統のチェック項目は三つしかない。『LLC』(ロング・ライフ・クーラントの略)と呼ばれる冷却液の量と状態、そしてラジエターキャップの劣化だ。以下、具体的な方法を紹介しよう。
まずLLCの量。ボンネットを開け、LLCのタンクを確認しよう。『H』~『L』の間にあればOK。
もし減っているようなら、要注意である。最近のクルマは1年や2~3万km走ったくらいでLLCが減るようなことなど無いからだ。
エンジンが冷えているのを確認し、ラジエターキャップ開けてLLCの色を見て欲しい。
オイル分や汚れなど不純物が無ければ問題なし。ラジエターシステムの『スーパーLLC NEW補充液』か『NEWクーリングアップ』(LLC強化剤)を『H』マークまで足す。
それでも数ヶ月単位で減ってしまうような時は、冷却系にピンホール(微少の穴)があるかもしれない。整備工場などに持ち込んで確認すること。
LLCを長い期間交換していない、というなら、自分でやってみたらいかがだろう。
といっても作業的には簡単。ラジエターの下部にLLCを抜くためのバルブがある。これを開けば抜けます。
ちなみにLLCは環境負荷物質に指定されているため、下水などへ廃棄できない。各自治体の規定に従い処分する事。
これまたエンジンが冷えた状態で作業すること。エンジンを止めた直後だと、100度以上になっていることも珍しくない。大やけどします。
LLCを全て出したら、バルブを締めて新品のLLC『スーパーロングライフクーラントNEW』をそのまま入れれば完了。マイナス40度まで凍結しないし、4年/10万kmという寿命を持つ。
最後にラジエターキャップ。ラジエターを密封し高圧化することにより、沸騰温度が高くなる(高い山など気圧が低い場所だと沸騰温度は下がります。圧力が高いとその逆)。最近のクルマは100度以上でも沸騰しないシステムになっている。しかしラジエターキャップの劣化により圧力が上がらなくなり、沸騰温度は低くなってしまう。ラジエターキャップを目視し、ゴムパッキンにヒビ割れなどあれば交換すること。
またLLCを入れた後、エアー抜きなどの作業が必要な車種もあるのでお忘れなく。
以上3つのチェックを行えば冷却系統はバッチリ。暑い夏も問題なく乗り切れると思う。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。