Vol.50「次世代エコカーへの取組み」
今や次世代エコカーの技術開発は全てのメーカーにとっても最優先課題となっている。
以下、最新の状況と傾向を紹介したい。カッコ内は紹介した技術を得意としているメーカーを示す。
ハイブリッド
次世代エコカーで一歩先行しているのがエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド。普通のガソリンエンジン車より50%以上実用燃費を伸ばせるのだから凄い。
ここにきて難点とされていたコストも、ガソリンエンジン車より20~30万円高という目標設定になってきた。残る弱点は車重のあるクルマだと燃費効率が悪くなること。
現時点で車重1.5トン未満の車両ならディーゼルより有利だとされる(トヨタ/ホンダ)。
クリーンディーゼル
急速に期待を集め始めているのが、ガソリンエンジンと同等のクリーンな排気ガスしか出さないディーゼル車だ。日産は2008年秋の市販を予告している。
ガソリンエンジン車より30~40%燃費が良くなる上、燃料である軽油もガソリンより安価。
ランニングコストでハイブリッドと並ぶ。ただ排気ガスの処理装置が複雑になるため、同じ動力性能を持つガソリンエンジン車より30~40万円程度割高になってしまう。
ハイブリッドと対照的で、車重のあるクルマほど燃費効率が良い。比較的大きなクルマの主役となりそう(日産/ホンダ/三菱自動車/スバル/VW)。
電気自動車
ここにきてバッテリーの技術が飛躍的に進化し、電気自動車の実用化も十分視野に入ってきた。三菱自動車とスバルは市販時期を2009年と発表。今まで高価だったバッテリーながら、量産効果でコストダウン出来そうな流れ。技術的課題は厳寒期に暖房を入れると走行可能距離が短くなること。暖房に電気を喰うのだ。車重1トン未満の都市型コミュター用として有望な次世代エコカーである(三菱自動車/スバル)。
燃料電池
数年前まで次世代エコカーの主役的な扱いだったものの、なかなかコストダウンが進まず話題に上がらなくなりつつある。しかし開発はキッチリ進んでおり、そう遠くない将来、燃料電池本体に関して言えば実用化の段階に入るだろう。最後のネックとして「どうやって水素を運ぶか?」が残る。ハイブリッドのように身近な存在となるのは、21世紀の中頃以降だと考えていい(トヨタ/ホンダ/日産)。
水素エンジン
マツダはガソリンや軽油と同じくエンジンの燃料として水素を使うコンセプトを打ち出している。排気ガスも水しか出さず、環境にやさしい。とは言え燃料電池の方が水素エンジンより5倍程度“燃費”が良い。水素を作るのにもエネルギーを必要とするため、効率を考えればガソリンを5倍使うエンジンのようなもの。安価に液体水素を作れれば、という前提条件で普及の可能性あり(マツダ/BMW)。
プラグインハイブリッド
簡単に言えば、プリウスに搭載するバッテリーの量を増やし、買い物など近所の移動ならエンジンを掛けないで走れるようにしたハイブリッド車のこと。
往復5kmくらいの移動ならガソリンを全く使わないで済む。短距離なら電気自動車。
長距離を走るときはハイブリッドになる、と理解すればいいだろう(トヨタ)。
エタノール燃料
ガソリンの代わりに植物などから作ったエタノールを使う。二酸化炭素は排出するけれど、それを植物が吸収。再びエタノールになるため、理論的に二酸化炭素のリサイクルとなる。したがってバイオエタノール車は二酸化炭素の排出量ゼロに区分されます。
最近はサトウキビやトウモロコシだけでなく、稲藁や雑草などからエタノールを作る技術も進む(ホンダ/アメリカ車)。
代替燃料
天然ガスを液化した『GTL』は、すでに昭和シェル石油が家庭用ファンヒーター用の燃料として販売を開始している。GTLの場合、ディーゼル用の燃料として使えるため大いに有望。その他、海底に埋蔵されている『メタンハイドレート』も商業化に向け、動き始めた。
以上ざっと説明したが、21世紀前半の本命はハイブリッドとディーゼルになると考えて頂ければ間違いないと思う。ちなみに全てのジャンルで日本車は圧倒的優位に立っていることも付け足しておきます。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。