Vol.48「ターボ車の今昔物語」
1990年前半まで「ターボ車」といえば日本車の得意分野だった。
30歳代後半以上の諸兄なら覚えているだろうけれど、排気量2リッターを超える3ナンバー登録車になった途端、自動車税などが突如ハネ上がる税制だったからである。
税金の安い5ナンバー登録車である2リッターエンジンのまま3リッターエンジン以上のパワーを稼げるターボ車は、日本市場に於いて絶大なる経済的メリットを持っていたワケ。
しかし1989年に行われた税制の大改定により、5ナンバー車と3ナンバー車の「壁」が無くなってしまう。
結果「高価だし燃費も良くない」ターボ車の存在価値は弱くなり、税制上のメリットを残す軽自動車を除き、今や絶滅危惧種というイメージ。
もはや一部の高性能車にしか残っていない状況(スバルのみ全モデルターボ車をラインナップ)。
一方、長い間ターボ車に対し否定的だったヨーロッパのメーカーは、大きく方向転換している。上手にターボを使うと、パワーも燃費も向上出来るということが解ってきたからだ。VWの場合、『TSI』と呼ばれる新しいコンセプトを提案し大ヒット中。
このシステム、1.4リッターエンジンにターボそしてスーパーチャージャーを組み合わせることにより、必要となった時に2.4リッター級のパワーが出るにも関わらず、ゆっくり走れば1.6リッター級の実用燃費を可能にするのだから凄い。
VWに聞くと「今後ターボ車をどんどん増やしていきます」。
ベンツも売れ筋のCクラスにスーパーチャージャー付エンジンを採用。
もちろんヨーロッパで半分以上の販売シェア持つディーゼル車は基本的に全てターボ車である。新車の2台に1台がターボ車なのだ。
今後どうなるだろう?
すでにスバルが燃費の良いターボ車を販売している。レガシィGTなど、2リッター260馬力のターボエンジンを搭載しているのにも関わらず、100kmで巡航すれば1リッター14km程度走ってしまう。
マツダのターボ付2.3リッターエンジンも、3.5リッター級ターボ無しエンジンと同等のエンジン性能を確保しながら、燃費は3リッター以下のエンジンと同等に抑えてきている。
ちなみにVWのようなエンジンを開発すれば、クラウン級の大型セダンや、アルファードのようなミニバンも1.4リッターエンジンでOK。燃費を20~30%改善させられる可能性が出てくるということ。
ここにきてハイブリッドやクリーンなディーゼルに代表される次世代の環境重視型パワーユニットがたくさん登場してきた。ターボ車も燃費を稼ぐための重要な技術だと考えていいのではなかろうか。一部の高性能車を除き「ターボ=燃費が悪い」という概念は変わりつつある。
参考までに書いておくと、ターボ車は高温になるタービン潤滑のため良質のオイルが必要。
インプレッサでラリーに出場している間、ジェットエンジン用ベースオイル配合の『モーターレブ』をずっと添加してました。
ちなみにターボ=排気ガスでタービンを駆動。圧縮した空気を作りエンジンに押し込む。
スーパーチャージャー=エンジンでコンプレッサーを駆動。圧縮した空気をエンジンに押し込む。どちらも過給器の一種類です。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。