国沢光宏のホットコラム

2005 ラリー参戦記

Vol.20「ラリー参戦記【1】」

人間なら誰でも「何かチャレンジングなことをやってみたい」と思っているんじゃなかろうか。

ただチャンスが無いだけである。

【Photo by 大嶋】

私の場合、TVでWRC(世界ラリー選手権)の解説をしているうち、走ってみたくて辛抱たまらなくなった。トップクラスのドライバーこそ「ちょっと無理!」な感じだが、中位以下の走りを見ていると「この程度なら何とかなるかもしれない」。最後の方になると、ラリーを楽しんでいる感じ。WRCの面白さは、出走可能台数に余裕ある限り誰でもエントリー出来る点にある。トップドライバーと同じ競技に出られる、というのはラリー好きにとって大いに魅力。TV解説者としても良い取材になることだろう。けれど10年以上チャンス無し。海外にラリー車を運び、WRCに出ることはそう簡単ではない。

しかし! 昨年、日本でもWRCが開催されることになった!これなら何とかなりそう。早速出場に向け準備を始め、何とかエントリーまでこぎ着けた。ところが予想外の事態に。海外のWRCは90台の出場可能台数に対し、多くて60台程度しか集まらない。なのに日本だけ90台をはるかに超える台数のエントリーがあったのだ。こういったケース、実績のある順にエントリーを受けるのだけれど、いかんせんラリーに出たことない私は不利。結果的に不受理となってしまう。準備全てパー。いやいやガックリしました。けれど一度始めたら納得できるまで続けなくちゃ。挫折は最後の選択である。

安全装置を付けただけのインプレッサで出場しました

とりあえず実績を作らなくてはならない、ということでラリーに詳しい人達と話し合った結果、アジア・パシフィック・ラリー選手権(APRC/世界ラリー選手権の下に位置する)から始めたらいいのではないか、ということになった。アジパシならエントリー不受理はないし、WRCよりお金も掛からない。といっても1戦あたり300万円程度の予算が必要。昨年までなら断念したろうけれど、もはや後戻りできず。加えて47歳という年齢を考えれば、こういった肉体的能力を必要とするチャレンジも最後でしょう。最悪、定期預金を崩せばいいことである。一度もグラベル(未舗装路)を走ったことのないまま海外のラリー、というのも無茶なので、まず国内のラリーにエントリーしてみた。するとどうだ! 驚くほど道が悪い。子供の頭くらいあるような石もゴロゴロ。私のラリーカー、予算不足のため市販車にロールバーやアンダーガードなどのラリー装備を付けただけ。良好なグラベルなら問題ないが、極悪路を全開で走ることなど出来ない。かくして「壊さないよう完走」したのみ。日本のラリーはWRCより難しい面を持っているのだ。それじゃ、と練習しようとしたが、全開で走れるような林道など無し。かくしてアジパシ開幕戦のオーストラリアは、ぶっつけ本番で迎えることになってしまった。

(続く)

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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