Vol.7「“車内で安全を確保する”という認識」
自分のクルマに乗っているときは、シートベルト無しだと何だか怖い感じがしてしまう。ところが人のクルマやタクシーに乗ると意外に無防備となる。私自身もそうだったけれど、タクシーを含め他の人のクルマのリアシートに座った時にベルト締めたら「運転を信頼していないんじゃないか?」と失礼な感じがするのかもしれない。
しかしリアシートに座った人がしっかり安全を確保するというのは、ドライバーにとってメリット大。説明しよう。まず物理的な問題から。シートベルトを締めない状態で前面から衝突すると、当然ながら前方に激しく衝突する。前に座っている人がシートベルトを締めていれば、その人に衝突するワケ。事故の衝撃から身を守れたのに、リアシートの人間が突っ込んできたんじゃ何の意味も無い。リアのシートベルトは前の人を守る意味をあるのだ。
二つめに社会的な責任を挙げておく。万一同乗者に重大なケガなどをさせようものなら、運転者は金銭的にも精神的にも大きなダメージを受けてしまう。高速道路の死亡要因で最も多いのがシートベルトを締めていなかったことによる車外放出(外に飛び出すこと)。自分は大丈夫だったのに、乗せていた人が無事でなかったら非常に辛い。といったことから、リアシートに座ったらベルトをするのはマナーにすべきだと私は考えている。タクシーやバスなど乗った時も、ぜひベルトを!
夏休みなどで海外旅行に行く人も多いと思う。日本ではチャイルドシートに座らなければならない幼児を連れて行くならどうしたらいいか?もちろんチャイルドシートを借りられればいいのだけれど、国や地域によってそうもいかない。タクシーに乗るときなど不可能と言って良かろう。かといって親のヒザに乗せるというのは、あまりに危険。メーカーの衝突安全性を専門とするエンジニアを含め、いろいろな人に話を聞いてみた。すると皆さん口を揃えて「チャイルドシートがどうしても確保出来ないなら、後ろの席で大人用のシートベルトを装着します」。
ジャーナリスト仲間でお子さんがいる森山みずほさんも全く同じ答え。ただ身体の小さい幼児に大人用のシートベルトを装着すると、肩ベルトが顔や首の部分に掛かってしまう。
そのまま衝突した場合、肩ベルトでケガをすることも考えられる(実際は子供が嫌がるので可能性は薄い)。ベストな方法は肩ベルトを子供の背中側に通してしまうこと。これなら万一事故に遭った時も、キッチリ安全に幼児の身体をホールド出来ます。ちなみに私は法規で定められる前からチャイルドシートを使っており、旅行などで普通のシートに座らせる事態に備え、ガムテープを持っていた。
肩側のベルトをガムテープで背もたれに貼りつけるのだ。海外だからチャイルドシートを使わないでもいいや、と思わないで欲しい。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。