国沢光宏のホットコラム

2020 クルマ&バイク情報

Vol.194「自動車のサブスクリプションサービスとリースについて」

「サブスクリプション」というクルマの乗り方が出てきた。購入ではなく「使用料を毎月払う」というシステムだ。ここまで読んで「リースと違うのか?」と思うかもしれない。メーカーによって任意保険料が含まれたり、途中解約をペナルティ無しで出来るケースもあるものの基本的に同じ。リースは日本に馴染まなかったため、呼び方を変えただけ。

ちなみにアメリカの場合、リースでクルマに乗るのが一般的だ。考え方としては住居と同じ。3~5年くらいでクルマを変えたいし、収入の変化によりクルマのランクも上下したくなることだってある。日本人だって若くて一人暮らしであれば住むところを買わずに借りることだろう。加えてアメリカなら「リース」も「購入」も毎月の負担額が大差ない。

リースの考え方は3年契約であれば新車価格から3年後のリセールバリューを引いた金額を、3年間で割る。例えば300万円のクルマで3年後に200万円の価値あれば、100万円を3年で割った金額(この場合2万7800円)がリース料金になります。実際は、メインテナンスパックや値引き、3年後のリセールバリューにより上下する。

アメリカのディーラーに行くと、ショーウインドウに月額リース料を書いた短冊がペタペタ貼ってあり、それを参考にしてクルマ選びをするイメージである。もちろん日本でも何十年も前からリースというシステムは存在しています。けれど日本だと購入するより圧倒的に高額になるため、少なくとも個人ユーザーの間には普及しなかった。

例えば人気のSUVであるRAV4を3年間KINTO(注)したとしよう。月額支払料金は6万3800円以上(グレードによって違う)。3年間で支払う金額は229万6800円になる。3年後、クルマを返却して終了。買ったらどうか?RAV4は265万6000円。20~30万円値引きもあるため、最初の諸費用込み支払い額を265万円だとして比べたい。KINTOには含まれている自動車税や任意保険料を加えて行くと、3年間で300万円前後になります。KINTOだと約230万円払って何も残らないのに対し、300万円で購入すれば3年後にクルマが残る。

日本に於けるリースにメリットはないだろうか?クルマを仕事で使っているなら、リース金額を100%経費として計上出来る。すでにリースを導入しているケースの大半が税金対策だと思う。KINTOは任意保険を含んでいたり、途中解約出来たりなど利便性を高めているけれど、もう少し安くならないと普通のユーザーからすれば割高です。

そんな中、ホンダが「マンスリーオーナー」という、リースと明らかに違うサブスクリプションを商品化している。新車でなく中古車を対象にしたもので、期間は1ヶ月~11ヶ月。こういった期間、買うのも面倒だし、かといってレンタカーだと割高。ホンダのシステムは、レンタカーを借りるよりリーズナブル。

例えば軽自動車のN-BOXだと1ヶ月2万9800円。「新型コロナ禍で通勤電車やバスに乗りたくないので、とりあえず2~3ヶ月クルマを持ちたい」みたいな使い方にはピッタリだと思う。今後はホンダのようなシステムも普及するし、トヨタだって決して諦めない。KINTOも今後月額料金を見直す可能性があるため、やがてアメリカのように普及すると考えます。

(注)トヨタが始めたサブスクリプション:https://kinto-jp.com/

  • KINTO

  • Honda マンスリーオーナー

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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