国沢光宏のホットコラム

2019 クルマ&バイク情報

Vol.184「電池技術の進化について」

リチウムイオン電池を採用した世界初の量販電気自動車である三菱自動車『i-MiEV(アイ・ミーブ)』が発売されたのは、2009年7月のこと。当時、リチウムイオン電池といえば先端技術の塊のような存在。自動車用の量産リチウムイオン電池は日本にしか作れなかった。続いて日産『リーフ』も2010年12月にデビュー。市販電気自動車の本格的な普及が始まる。

初代リーフ前期型(左)と中期型(右)

以来10年。電気自動車の性能はどのくらい向上しただろうか?発売してからも開発のスピードを緩めず、2~3年毎に大きな進化を遂げてきたリーフで技術の推移を考えてみたい。ちなみに筆者は2011年2月に初代リーフを購入。その後、2013年の改良型リーフも購入。そして現在、一番新しい2019年式のリーフe+に乗っている。

初期型リーフに搭載されていたリチウムイオン電池は、容量にして24kWhだった。解りにくいだろうから、ガソリンタンク容量だと考えて頂ければ良い。燃費に相当する「電費」を7kmだとすれば、150km程度が航続距離。エアコン使うと10%、ヒーター使えば20%くらい航続距離減になった。夏場135km。寒い日だと120kmだ。

2012年11月発売の改良モデルは電池容量24kWhのままながら、電池の進化などにより80kgも軽量化!2年間で電池重量が20%軽くなったのだから驚く。加えて耐久性や電費の改善、ヒーターの省エネルギー化により、実質的な航続距離は10~15%くらい伸びた。冬場ヒーターを使った時の航続距離が140km程度になったのだから素晴らしい。

3年後の2015年12月、電池容量を大幅に増やした30kWh搭載モデルを発売。初期型リーフと同じ搭載スペースに25%も大きな容量持つ電池を積んだということ。重さだけでなく、容量を25%も減らしてきたのだった。電池技術の進化は、エンジンよりずっと早い!エンジンのサイズを5年間で25%も減らすことなど出来ませんから。

その2年後の2017年9月、フルモデルチェンジを行い40kWhの電池に進化させた。航続距離は実際の使い方に近い(一般道を流れに乗って走ったモード)と言われるWLTCモードで322kmになった。私のイメージだと初代初期の150kmから、中期になり160km。30kWhで190kmへ。そして40kWhは250kmといった感じ。

150kmだと東京から成田空港の往復も出来ないが、250km走ってくれたら余裕だ。近距離のドライブなら充電無しで帰ってこられる性能になったと思う。とは言えガソリン車と比べると、少しばかり物足りない。ちなみに40kWhのバッテリー搭載スペースは、初代24kWhと同じ。7年間で170%になったワケ。電池技術の進化は、早いです!

現行リーフe+

最新のリーフe+は、62kWhという大きな大きな容量持つ電池を搭載してきた。WLTCモードなら458km!私の普通の使い方で楽々400km走るようになった。このくらい走ると、高速道路でもドライバーの休憩が必要になってくる。先日も東京から青森県の八戸までイッキに650km走った。人間が連続して走れるのはせいぜい3時間。

人間の食事や休憩に合わせ3時間毎に30分の急速充電を行うだけで八戸まで行けてしまった。もはや完全にガソリン車と同じように使えるようになったと思う。今後の課題はコストダウン。電池の小型化でコストも下がっていく。今までの進化速度を考えたら、あと10年で性能をキープしながら価格をハイブリッド車並に下げられるだろう。

そうなれば夜間電力100円の電気代で60km走れるようになる。リッター20km走れるハイブリッド車で60km走ろうとすれば400円前後かかる。エネルギーコストの低い電気自動車は一気に普及していく可能性が出てくると思う。進化の速度を考えたら電気自動車が普通のクルマになるまで、早ければ10年くらいか。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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