国沢光宏のホットコラム

2010 クルマ&バイク情報

Vol.77「進化する車の安全技術」

2つのカメラで画像解析を行うアイサイト

例えばスバル・レガシィに採用された『新世代アイサイト』の場合、人間の目と同じ機能を持つ(距離が解る、という意味)2 つのカメラにより前方を常時監視。30km/hまでの速度であれば、避けられない距離にある先行車や歩行者を感知した瞬間、自動的に“ほぼ”急ブレーキが掛かり停止する。

つまり30km/h以下で走っている限り理論的には事故を起こさないで済む、ということ。参考までに書いておくと、30km/h以上の速度域では完全停止にこそ至らないものの、自動で作動する急ブレーキ機能は働く。衝突時の速度を大幅に落としダメージを低減してくれます。

「安全確保」という点でさらに素晴らしいのが日野の新型トラック『プロフィア』に全車標準装備される衝突被害低減ブレーキ。航空機などに使われているミリ波レーダーを稼働させておき、先行車との車間距離を常時感知。車間距離が近くなるに従い、段階的な警告&自動ブレーキを掛けてくれる。

具体的に説明すると、危険だと考えられる車間距離になったなら、ドライバーに対する警報ブザーと弱いブレーキを自動的に掛ける。それでもドライバーがブレーキを踏まなければ(居眠りなど想定)、徐々に警告ブザーの音量を上げ、その後、強いブレーキを作動させ追突時の速度を大幅に落とす。

2次被害防止 緊急制動灯機能(後続車追突防止)

この手の安全装備、従来もオプション設定されていたけれど、全車に標準装備したという点で日野の大英断だと考える。全てのトラックに衝突被害低減ブレーキが装着されたら、悲惨な事故の多くを防げるだろう。第一世代の受動的な安全装備では大型トラックからの衝撃を受けきれないですから。

こう書くと「もっと技術を進化させることは出来ないのか?」と思うだろう。アイサイトで言えば、30km/h以上で走っている時だって停止させればいい。結論から書くと、近未来という条件を付ければ十分に可能。もっと正確に書くと、現在の技術でも乗用車やトラックを自動停止出来る。

なぜ導入しないのか? 国交省としては誤作動を懸念しているようだ。例えば60km/hで走っているときに誤作動して急ブレーキが掛かったら、後続車は追突してしまう。こういった論議、今までもあった。「走行中にエアバッグが誤作動して開いたら危ない」と言われれば、確かに可能性あります。

雪で前が全く見えない状況ですら新幹線は高速で走る。航空機だって夜間飛べる。全て電子的な安全技術を駆使しているからだ。レーダーやセンサーなど先端技術のコストが安くなってくると、クルマもそう遠くない将来「事故を未然に防ぐ」装備をローコストで付けられるようになると思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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