国沢光宏のホットコラム

2009 クルマ&バイク情報

Vol.66「自動車メーカーの再編 PartⅠ~GM破綻の波~」

日本では馴染みの無い「ビュイック」も新生GMに残ります。

予想されていたとはいえ、GMの破綻は自動車業界に大きな影響を与え始めた。果たして今後どうなっていくだろうか?最新の情報も交え、展開を考えてみたい。
やはり激震の中心となるのがGMである。このメーカー、日本人から見ると一つの企業に見えるものの、実体は「自動車メーカーの集合体」なのだ。以下、全てGM傘下にあるブランドです。

キャデラック(高級車)
シボレー(ファミリーカー)
GMC(商用車)
ビュイック(乗用車)
ポンティアック(乗用車)
サターン(日本車の対抗モデル)
サーブ(スウェーデン。すでに破綻)
ハマー(オフロードカー)

商用車である「GMC」も新生GMに残ります。

アメリカで販売しているブランドだけで8つ。世界的に見ると、ドイツのオペル(イギリスではボグゾール)、オーストラリアのホールデン、韓国のGM大宇も加わり計11ブランドとなるから凄い。
興味深いことにそれぞれが独立した工場や販売チャネル、開発部門まで持つ。
つまりサターンで言えば、GMの下部組織となる管理部門の下に開発、工場、販売店が作られており、同じサイズのクルマを売っているシボレーとの関係は非常に薄い。
トヨタの場合、同じ場所にある開発部門によってほぼ全てのモデルが作られ、トヨタの工場で生産され異なるディーラー系列で販売される。「1ブランドのみ売却する」ことなど出来ない。
さて、この中でGMが「残したい」としているのは、経営努力によって利益を上げることが可能とされる上から4つのブランドのみ。それ以外、基本的に売却か清算(無くなってしまう)の対象となっていると考えていいだろう。

現在判明しているのは、ポンティアックが清算。サターンを『ペンスキー』というアメリカの大手ディーラー(トヨタを中心に販売している)に売却。ハマーも売却交渉中。オペルは『マグナ』というカナダの大手部品メーカーなどが資本を入れるというもの。

サーブとホールデン、GM大宇はそれぞれの国の政府が補助金などを投入し、何とか企業として存続させようという動きになっている。しかしいずれも決定的な問題を抱えている。次世代モデルの開発をどうするか、ということである。

GMが(クライスラーも同じ)破綻することになった理由は「新しい技術を投入した魅力的なモデル」を開発できなかったからだ。特に高度な技術力を必要とする環境対応車で出遅れてしまっている。この点を何とかしない限り、復活は不可能。

新生GMに残る4ブランドですら、新しい環境技術を投入しなければ厳しいと思う。短期的に収益を上げられるようになっても「古き良きGM」を続けていれば、やがてユーザーが離れていってしまうだろう。

どうしたらいいか?おそらく日本と韓国、ことによれば中国の自動車メーカーも含めた大規模な再編(技術供与を含む)が必要。例えばトヨタのハイブリッド技術をGMに供与するようなことをしない限り、立ちゆかなくなる。大型車の多いアメリカではディーゼル技術も必要。

一方、GMとクライスラー破綻による工場閉鎖で生産&販売台数は半分程度になるけれど(両社併せて400~500万台の減少)、アメリカの景気が回復したなら、即座に1300~1600万台規模の市場に戻ることだろう。結果、圧倒的な供給不足となるハズ。

爆発的な需要が発生した時、どうしたらいいか?ここで上手に経営戦略を練れたメーカーは、大いなる成功を収めることになります。全ての日本の自動車メーカーにチャンスはあると思う。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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