国沢光宏のホットコラム

2006 クルマ&バイク情報

Vol.28「近年のディーゼル車事情」

いすゞ製1.7リッターディーゼルターボ。ガソリンエンジンと変わらない滑らかさを持つ。

今やヨーロッパではディーゼルエンジンを搭載する乗用車の販売シェアが軽く50%を超える。
売れる理由は燃費だ。
アコードクラスの乗用車の場合、ガソリンエンジン車ならリッター10km走るとしよう。
ディーゼルエンジン車だとリッター15kmくらい走ってしまう。
日本車でも同じ。
1BOXカーのハイエースを例に挙げると、2.7リッターのガソリンエンジンでリッター8km走るとすれば、2.5リッターのディーゼルターボはリッター12kmくらいまで伸びる。
大雑把に言うとガソリンエンジン車の1.5倍くらい走ってくれます。

今やヨーロッパではガソリンが1リッター170円。
軽油も150円と高価。
だったら少しでも燃費の良いディーゼルに乗りたい、ということなんだと思う。
しかも最新のディーゼルエンジン車、ガラガラした騒音も全く気にならないほど静かになったし、動力性能は同じ排気量のガソリンエンジン車を凌ぐ。
加えて『ユーロ4』と呼ばれる最新の排気ガス規制をクリアしている触媒付きディーゼルエンジンなら、排気ガスだって“ほぼ”無臭。黒煙も目視出来ないレベル。
数少ない欠点は、同じくらいの動力性能を持つガソリンエンジン車より20~30万円高い車両価格くらいである。
これも走行距離が長ければ、燃料コストの差でカバー出来てしまう。

フランスのガソリンスタンド。ガソリンと軽油の価格は日本ほど違わない。

なぜ日本でディーゼルエンジン車を売らないのだろうか?
数年前までは売れない理由が存在した。
あまり知られていなかったことながら、日本の軽油はヨーロッパで売られている軽油より「質的に劣っていた」のだ。
精製レベルが低く、硫黄含有量多目。
当然のように燃やすと臭く、黒煙も出やすい。
この軽油を使うと、触媒も詰まってしまう。
しかし最近になって軽油のクリーン化が大幅に進み、今や日本で売られている軽油は世界トップレベル。触媒も使える。
同時にディーゼルエンジンの技術も進化。
これまた世界トップクラスとなった。
したがって最新の規制をクリアしたディーゼルエンジン車に日本のクリーン軽油を入れれば、臭いや目視出来る黒煙など出ないと考えてよかろう。
だからこそ前述のハイエースはディーゼルターボが人気。
2006年秋からメルセデス・ベンツもディーゼルの乗用車を日本市場で販売する予定。
日本でも少しづつディーゼルエンジン車は増えていく気配も漂い始めた。
けれどヨーロッパのように「主流」とならないと思う。

スモークアウト

確かに以前と比べればディーゼルエンジン車もクリーンになった。
けれどガソリンエンジン車と比べれば圧倒的に厳しい。
最新のディーゼルエンジン車なら現在の排気ガス基準をギリギリでパス出来るものの、間もなく始まる新しい規制値はクリア不可能。
さらにディーゼルエンジンのクリーン化をすすめる、という選択肢もあるが、そうなると高性能触媒など使わなければならずコストアップ。
超クリーンなハイブリッド車と価格的にバッティングするようになってしまう。
といった理由から、日本でディーゼルが普及するのは難しいと思う。
もちろん現在新車で販売されているディーゼルエンジン車を買えば、当面問題なく乗れるのでご安心を。
古いタイプのディーゼルエンジン車に乗っているならクリーン軽油を使い、さらに『スモークアウト』など添加してやれば大幅に黒煙を減らすことが可能。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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