はじめに
今回はベースとなるボックス部分に流通用の木製パレットを使用します。比較的大きな作品ですが、お手軽に短時間で製作しようと思います。
木製パレットとは、主に製品を大量に搬送する時にフォークリフトなどで運びやすいように作られた配送台です。さまざまなサイズがありますから、製作時にはサイズを確認して入手しましょう。
材料準備
木製パレットは、入れる傘のサイズを確認して用途に合うものを用意します。今回の製作にあたっては、白井さんがパレット状のボックスを自作しました。
作り方は簡単ですので、パレット作りから挑戦するのも楽しいでしょう。
(パレットの作り方は、下記の「白井さんのワンポイント」を参考にしてください。)
<材料リスト>
木製パレット 白井さん自作品 100mm×820mm×920mm
円柱 直径30mm×910mm 1本
鬼目ナット M6×20 2個
極平頭六角穴付ボルト M6×60 2個
- 白井さんのワンポイント
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「木製パレットは、DIYショップや通販でも手軽に手に入ります。基本的に使用済み品は廃材になりますので、無料で譲ってもらえる場合もあるようです。
今回のパレットは、私が自作したものです。両サイドに2×3材(920mm長)を使い、それを挟むように1×4材(820mm長)を横板として適当に間隔を開けて並べて釘打ちすればできあがりです。入手したパレットでも同様ですが、製作前に電動サンダーなどでバリ取りをしておくと作業が楽です。」
ボックス部分の調整
傘の入れ口にあたる部分の板を剥がします。実際に使う傘を当てて、サイズを確認しながら何枚くらいの板を剥がすのか決定しましょう。少なめに剥がして、実際に傘を出し入れしてみて最終的な枚数を決めても良いでしょう。
今回は4枚の横板を剥がしました。
パレットは一般的には釘打ちをしてあるだけですから、釘抜きを使って剥がしていけば簡単に剥がれます。
- 白井さんのワンポイント
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「サイズを測る傘は一番長い傘を使いましょう。特殊な柄や握り手の傘がある場合は、その傘も出し入れしてみてどれくらいのスペースが必要か検討します。
板を剥がす時は釘抜きの平らな方を板の間に入れて隙間を作り、L字の方で一気に剥がすと簡単です。剥がした後の釘は抜いてしまうか、裏打ちをして先端が飛び出ないようにしておきましょう。」
傘掛け棒の製作①
パレットの両サイドの内側のサイズを測り(今回は750mm)、そのサイズで円柱を切ります。
切った円柱の両サイドの中心に印を付けます。円柱の側面に中心点を記す時に便利なのがセンターファインダーです。一種の定規ですが、側面にV字形に仕切りが付いており、この仕切りに円柱を合わせてセンター部分でラインを引きます。少し定規を回して再びセンター部分でラインを引いたときにできる交点が中心点です。
- 白井さんのワンポイント
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「一般的なセンターファインダーは数種類の角度のV字仕切りが付いていますので、円柱の太さに合わせて最適なV字に合わせて使いましょう。円柱だけでなく角柱や多角形柱にも使えるので、ひとつあると便利です。」
傘掛け棒の製作②
円柱側面の中心点を目安に電動ドリルで鬼目ナット用の穴を開けます。
この時のドリル刃は鬼目ナットの外周より少し細いものを使います。今回の鬼目ナットは外ネジ部の直径が9mmなので8.5mm径のドリル刃を使います。
穴の深さは、パレット側面の厚さが38mmでボルトの長さが60mmなので、22mmの深さに開けます。
円柱の両側に穴を開けたら、鬼目ナットが斜めにならないように気をつけながら六角レンチを使って埋め込んでいきます。鬼目ナットは円柱の側面より少し埋まる程度まで埋め込みます。
パレットの側面に傘掛け棒取付位置の印を付けて、取付位置のセンターにボルトを通す穴を開けます。
六角レンチを使ってボルトを鬼目ナットにねじ込めば本体のできあがりです。
- 白井さんのワンポイント
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「鬼目ナットは可動部などの補強に使われますが、軟らかい木材や割れやすい箇所などに使って強度を出すのにも便利です。
締めすぎるとどんどん中まで入っていくので、穴の深さがポイントになります。鬼目ナット用の穴やボルト用の穴を開ける時、その前に細いドリル刃でガイド穴を開けておくと作業がスムーズです。
また、ボルトにKURE 5-56 を塗布しておくとサビつきもなく美しく使えます。」
塗装
パレットはカタチが出来上がっていますから、細かく色塗りをしようとするとマスキングが大変になります。そこで今回は、デザイン性も兼ねて横板の表面にだけ塗装してみました。
水性塗料を刷毛に含ませたら、余分な塗料は缶の縁ですくようにして落とします。薄めで重ね塗りするのが上手に仕上げるコツです。
板ごとに色を変えてカラフルに仕上げてみました。
- 白井さんのワンポイント
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「市販品のパレットを使う場合は、表面をペーパーがけしたほうが塗料のノリがよくなります。最近の水性塗料は乾きが速いので、重ね塗りをしてもあまり時間がかかりませんから、慌てずゆっくりやってみましょう。」
今回の工具
今回は基本部分を市販品のパレットを使用したため、使った工具も一般的なものばかりです。六角レンチは組立家具などでも使うことが多い工具ですが、標準的なセットを持っていると、ちょっとした時に便利です。
- 白井さんのワンポイント
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「今回は電動ドリルと電動インパクトに異なるサイズのドリル刃を付けて使いました。ドリル刃自体をKURE 5-56 でケアするのももちろんですが、意外に忘れがちなのがドリル刃の取付け部分のケアです。ここにも使用後にKURE 5-56 を吹き付けておくとサビ取りだけでなく、動きも滑らかになります。」
今回の制作には、こんな道具を使いました。
- 電動ドリル
- 電動インパクト
- ノコギリ
- 釘抜き
- センターファインダー
- 六角レンチ
- ハンマー
- 塗料
- 筆記具
Profile
木工家 白井 糺
1947年東京都大田区生まれ
実家は下町の町工場で木型屋を営む。
中学卒業後すぐに木工職人として弟子入りしたが、
20代の頃、バイク好きが高じてレース活動に没頭。
世田谷区馬事公苑にバイクショップを開き独立。
その後、木工職人として復活。木工歴は約35年。
現在は木工やDIYの普及に力を注ぐ。
3.11以降、木工を軸とした被災地支援活動を継続して行っている。