はじめに
今回は、プラスチックの植木鉢やダストボックス、工具箱、カーゴボックスなど、メインとなるボックスに何を選ぶかで、デザインや雰囲気だけでなく、用途にも影響してきます。最初に用途を決めて、それに合ったボックスを選んでオリジナリティ溢れた移動式ボックスを作りましょう。
また、選んだボックスによって、細かなサイズや制作の手順も少し違ってきます。今回の制作では、サイズなどの詳細や制作工程の細部は参考として考え、あくまでも現物合わせで臨機応変に作ることをお勧めします。
材料準備
今回の制作で用意したボックスは、ファイバークレイの四角い植木鉢です。
ファイバークレイは、ガラス繊維と樹脂に土を練り混んだもので、軽くて劣化が少なく独特の風合いもありガーデニングなどで人気の素材です。FRP系の素材ですのでプラスチックに似た加工が可能です。
<材料リスト>
ファイバークレイ製植木鉢(330mm×330mm×330mm)
1800㎜長の「2×8材」1枚
1800㎜長の「2×6材」1枚
1800㎜長の「1×2材」1枚
キャスター 4個
取っ手(固定ねじ付)
T型レンチ(ソケットタイプ 12mmサイズ)
配管用サドルバンド(13Aサイズ)
蝶番 2個
六角ボルトナット 適量
細ネジ 適量
- 木村さんのワンポイント
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「ボックスを選ぶときは、サイズと材質に注意しましょう。あまり大きいボックスは作りづらくなりますし、小さすぎると用途が限られます。材質は軽さと加工のしやすさ、そして耐久性などを考えるとプラスチック系の素材が便利かもしれません。また、形は丸形より四角いものが作りやすいです。」
ボックス用蓋の製作
(加工)
今回のボックスのサイズが約330mm×330mmですので、幅184mmの2×8材と幅140mmの2×6材を合わせると324mmで、ほぼボックスのサイズと同じになります。
2×8材と2×6材それぞれの端を数センチ捨て切りし、そこから330mmを計ってカットします。
次にボックスの内側を計ります(この場合は約280mm)。
この数値を参考に、蓋の梁となる材料を1×2材から切り出しますが、ボックスの内側サイズに近いと動きが悪くなりますので、少し短めで(270mm)で2本切り出します。
切った材料は電動サンダーで面取りをしておきましょう。
さらに梁は、開け閉めの時にボックスの縁に引っかからないように両端の片面の角を半円形にカットします。このときに便利なのが「ノコヤスリ」です。まるで糸ノコの歯を組み合わせたような道具で、研磨するというより削り取る感じでゴリゴリと加工していきます。角が丸く削れたら電動サンダーで滑らかに仕上げます。
蓋板用の2×8材と2×6材を揃えて並べ、梁用の1×2材を固定します。
梁とボックスの縁が干渉しないように縁の厚みを考慮したガイドライン(今回は幅23mm)を蓋板の周囲に描き、それを参考に梁の位置を決め細ネジで固定します。
- 木村さんのワンポイント
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「蓋のサイズを決めて一枚板からカットしてもいいのですが、1×材や2×材などの規格サイズで作って、余った材料をストックしておくと他のものを作るときに意外に役に立ちます。」
ボックス用蓋の製作(塗装)
続いて、できあがった蓋に塗装を行います。塗装も選んだボックスのタイプによって、まったく異なりますが、今回はレトロ感のあるファイバークレイボックスの雰囲気を生かしてアンティークなワイピング(汚し)塗装に挑戦してみましょう。
塗料は、ウッドデッキ用の水性塗料を使います。全体的に古く汚れた感じを出すために、苔の感じのダークグリーンと土の感じのダークブラウンを用意しました。
まず、古い雰囲気を強調するために蓋の表面にダメージ加工を施します。ドライバーを使って引っ掻き傷をつけたり、スチールタワシで擦り傷をつけたり、ハンマーで凹みを作ったりします。
傷付けた蓋の表面に、刷毛でダークグリーンの塗料をのせ、布を用いて素早く擦り込んでいきます。傷や凹みに擦り込むようにすると変化が出て、自然な汚れ感が出せます。さらに、ダークブラウンの塗料を布にしみこませて、蓋の表面を布で叩くようにして土汚れを描いていきます。
裏面も簡単にダークグリーン塗装をして完了です。
- 木村さんのワンポイント
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「時間をかけると塗料が乾いてしまうので、手早く布で伸ばすのがポイントです。濃くしたいときは、一度に大量の塗料を使わず、薄く塗って乾いてから重ね塗りをすると仕上がりが良くなります。」
ボックスの加工
ボックス本体も、どのようなボックスを選ぶかで作業内容は異なりますが、ここでは塗装とキャスターの取り付けを行います。
塗装は蓋と同様に、ファイバークレイボックスの雰囲気を生かしたワイピング塗装です。色、塗り方とも蓋と同様ですが、今回のファイバークレイボックスは地色が少し濃いグレーなので、蓋と同じだと汚れが薄く感じられるので、重ね塗りをして濃い目にしましょう。
キャスターは、製品ごとに取り付け方が異なりますので、それぞれの製品に応じた取り付け方をしてください。特に、取り付け用の穴開け時には、ドリル径の選択に注意しましょう。押し込みタイプは少し小さめの径を、ナット止めタイプは少し大きめを選ぶのがコツです。
今回使ったボックスは植木鉢ですので、底面に水抜きの穴があります。用途によって穴をふさぎたい場合は、グルーガンを使うと簡単です。穴の外側にマスキングテープを貼り、内側から接着剤を盛っていきます。接着剤が乾いてからテープをはがせば完了です。
- 木村さんのワンポイント
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「ワイピング塗装は、作業自体は難しくないのですが、自然な汚れを作り出すには少し慣れが必要かもしれません。アンティーク物の写真や、庭や公園の古く汚れた置物などを見て、雰囲気をつかむといいでしょう。」
仕上げ
まず、蝶番で蓋をボックスに装着します。蓋とボックスの蝶番取り付け位置が面一になっていることを確認して、まず蓋の側面に穴を開けて蝶番を細ネジで固定。さらに、ボックス側の穴位置を確認してボルト穴を開けます。蝶番のボックス側は六角ボルトナットで固定します。
次にボックスに引き手を取り付けます。専用の引き手を装着してもいいのですが、今回はちょっとした遊び心でT型レンチを使ってみました。T字部分を持ち手とすると、ソケット部分の膨らみがストッパーとなり、出し入れのできる便利な引き手になります。
引き手(T型レンチ)の収納位置を目安に、留め具の位置を決めます。留め具として使用するのは配管などを留める配管用サドルバンドです。この時、T型レンチのソケット部分が抜けないようにサドルバンドの幅を調整します。
位置が決まったらサドルバンドのネジ位置に合わせてボックスに穴を開け、細ネジで固定するのですが、FRP系やプラスチック系の素材は細ネジでは固定できないので、1×2材を50mmほどの長さに切り、それをボックスの内側からあてがい、サドルバンドと木材でボックスを挟むようにして細ネジで固定します。
最後に、蓋に取っ手をつけてできあがりです。
- 木村さんのワンポイント
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「パーツをネジ止めするときに、ネジが長くて裏側に飛び出してしまうときの裏技。ネジ先を小型の番線カッターで切ればいいのですが、切る前に一度、取り付け位置にネジを通して、逆回転させてネジを抜き取ってから切ると、先端を切ってもスムーズにネジが入っていきます。」
今回の工具
各種電動工具をはじめ、L型金尺、各種塗料など、今回初登場の「ノコヤスリ」以外、このコーナーを何回かご覧の方にとっては、ほとんどがお馴染みの工具です。板のダメージ加工に、スチールタワシ、ドライバー、ハンマー、金へらなどを使いました。
- 木村さんのワンポイント
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今回の製作でダメージ加工用にスチールタワシを用意したので、ちょっとサビてきたペンチのサビ取りにKURE 5-56 と合わせて使ってみました。KURE 5-56 を軽く吹きかけてスチールタワシで軽く擦ると、みるみる取れて、ちょっとした快感です。ぜひ、お試しください。
ワンポイントアレンジ
ボックスの内側に、両面テープなどを使ってフックを取り付け、コンビニ袋をぶら下げるとダストボックスとして使いやすくなります。
今回の制作には、こんな道具を使いました。
- 電動丸ノコ
- 電動ドリル
- 電動インパクトドライバー
- 電動サンダー
- L型金尺
- メジャー
- 塗料
- クランプ
- 筆記具
Profile
株式会社木村グリーンガーデナー 代表 木村博明
1966年千葉県市川市生まれ
京都木戸雅光作庭事務所にて修行
木村グリーンガーデナー二代目として現在に至る。
第八回TVチャンピオン「ガーデニング王」準優勝
2003年 2004年 2006年DIYホームセンターショウで、講師&ガーデン製作を担当
2004年季美の森ガーデンコンペ優勝!!
2005年5月号より学研社「ドゥーパ!」にて“木村博明のモダン和風ガーデン小物”好評連載「自然暮らしの会」、マスターインストラクター