Vol.166「東京オートサロン2018」
年初に開催された東京オートサロン2018の入場者数は、会期3日間で31万9千人と発表された。昨秋の東京モーターショー、2年に1度しか開催されないのに10日間で77万1千人。人気度からすれば圧倒したように思う。入場者数の低下に歯止めが掛からない東京モーターショーと、どう違うのだろうか?
まず観客の層だけれど、東京モーターショーと全く変わらない。黎明期のオートサロンは改造車主体だったものの、今や自動車メーカーのブースが大人気。タイヤやメーカー系のパーツを扱っている部門、大手のアフターパーツメーカーも賑わっていた。家族やカップルで見に来ている人達が多い。
ということで、オートサロンにやってくる観客は改造車を見に来ているのでなく、出展されている内容に魅力を感じていると考える。例えばトヨタのブース。東京モーターショーだと、テーマは環境や安全で、携帯端末の自動車版のようなイメージ。クルマ本来の楽しさを追求していないような印象。
クルマを「趣味の対象」としているのでなく「移動の道具」として捉えているのだった。いくら楽しい演出をしても、やはりクルマの魅力と携帯端末の魅力は違うと思う。「繋がるクルマ」と言われたって、スマートフォンを持っていれば、それで足りる。自動運転もクルマ嫌いの考えること。
オートサロンのトヨタブースに行くと、クルマ本来の魅力”しか”打ち出していない。今回、市販すれば8千万円とも1億円を超えるんじゃないかとも言われるスーパーカーを出展してきた。世界初公開である。このクルマを東京モーターショーでなく、オートサロンで発表したことだけで「なるほど!」。
出展している車両も、全てスポーツモデルや、合法的なドレスアップカー。いずれも見ているだけでワクワクする。さらに演出も派手。マッチョなお兄さんとダンサーがステージで存在感を出しまくるなど、規制が厳しい東京モーターショーなら全く受け入れられない内容。
ダイハツやスズキも、様々なドレスアップカーを並べ、圧倒的に薄着のコスチューム着た魅力的な女性を揃えていた。オートサロンに行くと「しかめっ面」などなく、みなさん笑顔。やはりクルマは楽しいモノだと思い出す。
オートサロンの魅力は外国へも伝わっているらしく、取材に訪れる海外メディアの数も多い。ちなみに2月10日~12日は関西で最も人気のあるイベント『大阪オートメッセ』(主催はオートサロンと別。2017年の入場者数22万4千人)が開催される。行けばきっとクルマの楽しさを思い出させてくれるだろう。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。