Vol.138「水害にあった時の対処法」
台風の時期になると、いつも深い水たまりの中で波を蹴立てて走っているクルマや、水没したクルマの映像が出てくる。運転中に大雨と出くわしたらどう対応すればいいだろうか?
水たまり区間
まず水たまり。自動車は構造的に一定の水深以上になると動けなくなってしまう。大雑把な目安として「ドア開口部ギリギリまで」と認識しておけばいい。当然ながらスポーツカーのように車高が低いクルマだと浅い水深でアウト。SUVに代表される最低地上高の高いクルマなら強い。
ドア開口部より深い水に入ると、ラジエターファンなど水没。エンジンルーム内に大量の水しぶきを飛ばし、まんべんなくシャワーのように振りかかり、すぐに走行不能にならなくても電気系にダメージを与えてしまう。特に海水混じりの水は、相当の確率で走行不能を伴うトラブルを後日おこす。
また、深い水たまりを走る際、皆さん速度上げて突っ切れば良いと考えるようだけれど、これは大間違い。速度を上げるとフネのように車体前面に水が盛り上がり、一段と深い水たまりの中を走ることと同じになる。ドア開口部までの水深のみ、可能な限りユックリ走って頂きたい。
ちなみに電気自動車は重いバッテリーが車体の下部にあるため浮きにくく、電気系も密閉されているため水に強い。エンジン車が走れる水たまりなら難なく通過出来るので御安心を。いずれにしろ深い水たまりに遭遇したら、一旦停止。他のクルマの動向を見てから走行すべきである。
運悪く水没したらどうか。窓が閉まった状態で、ドアの半分くらいまで水没したら(その時は浮いていると思う)、人のチカラでは水圧でドアが開かない。皆さんガラスを割ることを考えるようだけれど、道具無しだと無理。一時期、ガラスを割るためのハンマーも推奨されたけれど、最近不人気。
ヘッドレストを外すと金属が出てくる
そんな時はパワーウィンドウを試して欲しい。浮いている状態なら99%パワーウィンドウは動く。水没しているクルマのライトやウインカーなどが点いているのを見れば解る通り、水没直後の電装部品は問題なく稼働します。無理をしないでパワーウィンドウを開け、脱出すればよいと思う。
ただ窓ガラス部分まで水没すると、水圧でパワーウィンドウも動かなくなる。そんな時に覚えておくと良いのが、ヘッドレストを使う窓ガラスの割り方。ヘッドレストを取り外し、棒になっている部分を窓ガラスのワクの部分に差し込み、テコの原理で窓ガラスを圧縮してやれば簡単に割れる。
車種によっては有効でない場合もある
割れると同時に大量の水が入ってくるため、深呼吸してから行うこと。ちなみに、フロントガラスを割ることは不可能に近い。市販されている窓ガラス割るハンマーでもヒビが入るだけ。窓ガラス用ハンマーを買うときは必ず認定品を。割れない模造品も出回っているので御注意を。
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。
学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。