国沢光宏のホットコラム

2015 クルマ&バイク情報

Vol.135「電気バイクの将来性」

zecOO (ゼクー)という電気バイクが発売された。このバイク、開発中に見せていただいたけれど、個性的なデザインで近未来の乗り物というイメージ。888万円という価格を見て解る通り大量生産を前提としたバイクではないものの、新しい可能性を見せてくれたと考えます。

zecOO

こうなると気になるのが、実用的な電気バイクである。50ccの原付バイクと同等の動力性能を持つ電気バイクはヤマハから何度か発売された。しかし航続距離の短さと割高の価格設定のためあまり評価されず売れ行きも伸び悩んだ。原付一種は文字通り日常の足。電気バイクのニーズも少ない。

けれど125ccとか250cc程度の電気バイクなら大いなる将来性を持っていると思う。例えば250ccクラスだとしよう。zecOOのようなカッコ良いデザインのバイクを、現在の250ccスクーターと大差ない価格である60万円くらいで出したらどうか?コスト的には成り立つだろう。

現在リチウムイオン電池の価格は急速に下がっており、1kWhあたり4万円もあればOK。そう遠くない将来、制御ユニット込み25万円で5kWhくらい乗せられる。1kWhあたり20km走れば航続距離100km。250ccバイクの1日あたりの航続距離として考えれば十分だと思う。

充電時間は、日本全国津々浦々どこにでもある100Vなら、からっぽの状態から5時間ほど。電気自動車用の200Vが来ている充電場所であれば、90分ほどでフル充電出来てしまう(電池容量半分からの充電だと45分で済む)。外出先で充電しながら移動する、といった使い方もいい。

ヤマハEC-03

ここにきて全国規模でガソリンスタンドが減少している。普通のエンジンのスクーターなど、ガソリンを入れに行くだけで苦労するほど。電気バイクならいつでもどこでも充電インフラがあるから便利。電気バイクに限らず、電気で走るモビリティは、スタンド減少問題への対策にもなります。

将来性がありそうな電気バイクながら、なぜ市販されないのだろう。このあたり「保守的になりすぎている」という日本のバイク業界が抱えている大きな課題かもしれない。現在日本のバイク産業は、世界規模でドゥカティやKTMに代表されるヨーロッパのバイクメーカーに押され気味。

一番恐れているのは、元気のあるKTMやトライアンフが中国や韓国などの安価なリチウム電池を使い、魅力的な価格で、実用的な電気バイクを出してくること。幸い現在販売している中国や韓国メーカーの輸入電気バイクは、コストパフォーマンスや商品力という点で日本のユーザーも関心を示していない。

このあたりで日本勢もzecOOのような新しい価値観のバイクを作ってみたらいいのに、と思う。ちなみに電気バイクは静かで滑らかなだけでなく、アクセル開けた時のレスポンスの良さなどでエンジンと全く違う。デザインの自由度も大きい。きっと新しい魅力を引き出せることだろう。

国沢光宏
国沢光宏 - 昭和33年東京都中野生まれ。

学生時代から自動車専門誌などでレポーターを始め、その後出版社を経てフリーの自動車ジャーナリストに。
著書に「愛車学」(PHP研究所)「ハイブリッド自動車の本」(三推社/講談社)「クルマの寿命を伸ばす本」(同)を始め多数。得意分野は環境問題、次世代の技術解説、新車解説。
毎日1万人が見に来る(KUNISAWA.NET)も好評。

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